朝日新聞の記事に、大学生のアルバイトについてのものがありました。「ブラックバイト『不当な扱い』7割が経験 教授ら調査」と言うタイトルの記事です。1
タイトルからも分かるように、朝日新聞としては、「世の中にはブラック企業ばかりがあり、学生が搾取されている」という事を伝えたかった記事のようです。まあ、朝日らしいスタンスだとは思います。でも、実際に記事を読んでみると、朝日新聞の主張にはかなり違和感を感じました。
もちろん、いわゆるブラック企業と言うのが存在することは否定しません。でも、被害の実態を過大に見せたかったり、学生が一方的な被害者であるかのような印象を与えたかったりしているように感じるのです。要するに、公平では無い感じが強かったのですね。
まあ、そのあたりまで含めて朝日新聞的と言えなくもありませんけどね。実際にどんな点が気になったのか、記事を引用しながらご紹介したいと思います。
深夜のバイトが多いのは学生の選択だよね
まず最初に紹介したいのは、次の記述です。
時給の高さから深夜バイトを選ぶ学生もいて、居酒屋などで午後10時~翌日午前5時に週1回以上働いたケースは4割強にのぼった。特に午前0時過ぎの勤務者のうち約2割は授業を「たびたび」「ときどき」欠席すると回答した。企業がコスト削減などで正社員の深夜勤務を減らし、その分頼りにされる学生バイトに勉強の面でしわ寄せが出ている構図だ。
これを読むと、深夜バイトがあることが悪であるかのような印象を受けることでしょう。というか、朝日新聞はそういう印象を与えたがっているのが読み取れます。「学生バイトに勉強の面でしわ寄せが」なんて、まさにそういう表現ですよね。
でも、この書き方って、かなり恣意的なものを感じませんか?
確かに、深夜の労働をアルバイトに任せようというのは、企業側の意図でしょう。でも、その仕事に就くかどうかは学生の意思ですよね。何で学生が被害者になってしまうのでしょうか。学生は昼間のバイトを選ぶ事だってできるわけです。
また企業としてみれば、深夜バイトをしてくれるのであれば、学生である必要は無いのです。フリーターだって何だって良いはずです。
何で企業が悪いような主張になってしまうのでしょうか。なんだか、大昔のリベラルの人の主張を聞かされているような感覚になります。
そんなに厳しく糾弾されるほどの不当な扱いなのか?
次に気になったのが、学生が職場で不当な扱いを受けているという事を記述している部分です。
職場で「不当な扱いを受けた」と答えた学生は7割弱に達した。具体例(複数回答)としては「希望していないシフトに入れられた」が約21%と最多で、「労働条件を書面で渡されなかった」も約19%あった。こうした学生の約半数、全体の3割ほどは誰にも相談せずに泣き寝入りしていた。友人や家族に相談した人もいたが、労働基準監督署や労働組合、弁護士に相談したケースはほとんどなかった。
記事では、不当な扱いを受けた経験をもつ学生が7割もいると主張したいようです。確かに調査の範囲では、それは事実なのかもしれません。
でも、例として挙がっている不当な扱いって、かなりインパクトが弱い気がしませんか?
具体的には、「希望していないシフトに入れられた」「労働条件を書面で渡されなかった」の2つが挙げられていますが、この2つをもって「泣き寝入り」などといわれてもねえ。あまり説得力が無いのです。
まず、希望しないシフトを入れられることなんて、昔からよくある話ですよね。例えばケーキ店に勤めていれば、「クリスマス時期はどうしても頼むよ」なんて言われる可能性は大きいでしょう。結局なし崩し的にシフトを入れられてしまうという事もあります。人によっては、これだって希望しないシフトだと感じるでしょう。
労働条件を書面で渡されないなんて、さらに頻繁にあるはずです。そこそこの規模の企業でなければ、口約束で働かせてしまうなんて、珍しい話でも何でもありません。それに労基法に抵触することを知らない雇用主の方が多いのでは無いでしょうか。
ですから逆に、「これらの経験をした学生が、2割程度しかいないの?」と言う驚きの方が強いのです。もしかしたら、問題であることを知らない学生の方が多いのでは無いかとすら思ってしまいます。
もちろん学生を雇う側としては、ちゃんと対応しないといけません。無理やりシフトを入れるのはダメですし、労働条件も書面で示さないといけません。そのことを否定するつもりはありません。
でも、ブラック企業によって搾取される大学生みたいな構図を作りたいのなら、もう少し分かりやすいものを出した方が良いと思うのです。
やっぱり、「労働条件を書面で渡されなかった」という事例を見せられて、「今の学生はなんて可愛そうなんだ」とは思えませんよね。
労働条件の書面がないから弁護士に相談は話が飛びすぎ
ちなみに、労働条件の書面がないという記述の直後に、次のような記述がありました。
こうした学生の約半数、全体の3割ほどは誰にも相談せずに泣き寝入りしていた。友人や家族に相談した人もいたが、労働基準監督署や労働組合、弁護士に相談したケースはほとんどなかった。
これも、率直に言ってクビを傾げる話ですよね。労働条件の書面が無いからといって、弁護士に相談なんて話にはならないはずです。労働組合にだって相談しません。せいぜい労基署くらいでしょう。
労働組合とか弁護士に相談するには、やっぱりそれなりの大きな問題でないとおかしいですよね。そうでないと、制度的に相談できるとしても、普通は行動を起こしません。こういったところに相談という話にしたいのなら、もっと分かり易い例がないといけないですよね。
ちなみにここでも「泣き寝入り」というマイナスのイメージが強い言葉を使って、企業が悪で学生が被害者という構図を作ろうとしているのが分かります。何とも先入観が強すぎる記事だという印象を強く持ちました。
- ブラックバイト「不当な扱い」7割が経験 教授ら調査
朝日新聞デジタル 2015年4月29日 [↩]
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