ダイヤモンド・オンラインで「貧困状態でも生活保護を選べないシングルマザーの葛藤」という記事を見つけました。この記事によると、シングルマザーの中で生活保護を受けているのは、全体の14.4%に過ぎないのだそうです。
また記事では、子供が2人いる場合の東京都の生活保護費を計算していました。生活扶助・住宅扶助・母子加算・児童養育加算を加えると26万7000円ということです。児童扶養手当を考慮しても、おそらく、これだけ稼げている人は多くないでしょう。ということは、生活保護を利用する気があれば、本当は利用できるシングルマザーが多いと言うのが記事の主張です。本来は利用できるのに、敢えて利用していないということですね。より正確な説明は、記事をお読みください。
さて、生活保護を利用できるはずのシングルマザーが、生活保護を利用しない理由は何なのでしょうか。記事では次のような理由が挙げられていました。
- 健康保険証が使えず、医療券で医者にかかるなど『制約が大きい』
- スティグマの問題
- 地方では、「生活保護か、車か」の究極の選択となりやすい
ちなみに、スティグマという語ですが、デジタル大辞泉では「恥辱。汚名。負の印。」と定義されていました。ちょっと日本語にし辛い言葉ですが、この場合は「不名誉」とか「後ろめたさ」みたいな事でしょうか。
リベラルの人たちによると、生活保護は恥ずかしくないものらしい
この問題を考えるときに、どうしても考えないといけないのが、「生活保護を受けるのは恥ずかしいことなのか?」という話でしょう。これは人によって大分意見が違うようです。
例えば日本共産党の政治家の話を聞くと、「生活保護は当然の権利で恥ずかしいものではない」という言い方をしていることが多いようです。いわゆるリベラルの政党の人達は、こういうスタンスなのですね。
また、ある記事では次のような書き方をしています。
「行政に頼ることは恥」という思い込みの影響があり、生活保護よりも借金のほうが「恥ずかしくない」という不思議な思考パターンや、極端な場合は「人の世話になるぐらいなら死を選ぶ」という間違った自己責任の考え方が生まれてしまうこともあるようです。1
「思い込み」とか「間違った自己責任の考え方」のような強い言葉を使っていることから、これを書いた人もリベラルの政治家の人たちと同じような感じのスタンスなのでしょう。
でも、日本人の感覚から言うと、生活保護ってやっぱり恥ずかしいものですよね。当然の権利だとも思いますが、貰って当然みたいな態度を取られるのも違和感を感じます。
困ったら行政に助けてもらえば良いですし、借金漬けになる前に行政の助けを借りるのは悪いとは思いません。ですが、そういう感覚を「不思議な思考パターン」なんて言われるのはちょっと心外なんですよね。人に迷惑をかけないように生きると言うのは、とても日本人的な発想だと思いますから。
ですから、リベラル系の方々のスタンスには、ちょっと違和感を感じてしまいます。
「生活保護=恥」が行き過ぎるのも問題
その一方で、生活保護を受けないことにより、生活に深刻な支障をきたすような場合もあります。極端な例だと、生活保護を受けなかったために餓死してしまうようなケースもあります。
例えば2011年には、大阪の元資産家の姉妹が餓死するという事件がありました。この姉妹は生活保護の申請を勧められていたようですが、拒否していたということです。
ここまで極端ではなくても、子供に十分な食事を与えられず、夏休みの間に子供がやせ細ってしまうと言うような事もあるようです。給食がなくなる夏休みの期間は、十分な食事が与えられていない場合があるということのようです。
これはこれで、かなりおかしな話と言えそうです。特に子供がいる場合は、個人の「恥」の感覚よりも子供の事を考えて欲しいですよね。
「多少恥ずかしいと感じつつ、いざと言うときには助けを借りる事は悪いことではない」というのが、私の中では一番しっくり来るところです。ただ、人によってかなり意見は分かれそうな気がします。
「生活保護=恥」が差別につながる可能性も大きい
生活保護を受けにくい原因の一つに、周囲からの目というのもありそうです。具体的には、生活保護を受給すると、差別を受けることがあるようなのです。
「生活保護=恥」という考えが自分に向く場合はまだ良いのでしょうが、人に対しても同様な考えを持つわけですね。「生活保護の受給者=恥ずかしい人」になってしまうのでしょう。
一時期、「生活保護の受給者がパチンコをしているのはけしからん」というようなことが言われた時期がありました。この時期には、差別は酷かったようですね。
確かに、パチンコは無駄遣いの象徴のようなイメージがあります。多くの人にとって、生活保護の人がパチンコをして無駄遣いするのは、やっぱり違和感を感じるでしょう。
特に、「生活保護=恥」と言う感覚があり、生活保護を受けられるのに申請していない人からしたら、批判したくなる気持ちも当然です。「人に迷惑をかけて生活保護を受給しているのに、パチンコなんて浪費をするのか」という感覚になるわけです。私自身も、これに近い感覚を持っています。
でも、その一方で、生活保護の受給がやむを得ない人たちが差別に会うのは、やっぱり、ちょっと変な話ですよね。パチンコは論外としても、「1日1箱タバコをすうのはどうなのか?」とか「1日1本ビールを飲むのはどうなのか?」とか、線引きが難しい問題でしょう。
- 他人事ではない貧困、「借金のほうが生活保護よりマシ」という思想の裏に潜むものとは?
Mocosuku Woman 2015年5月3日 [↩]
タグ: 生活保護
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