アニメ業界は間違いなくブラックだな| しかも、業界の構造を変えない限り改善を期待するのは難しそう

最近、ブラック企業という言葉をよく聞きます。ただ、言葉の定義はあいまいなようです。

最近の使われ方で一番一般的なのが、労働条件が悪い企業や労働基準法を守らない企業を指す時に使うことが多いようです。もともとは、暴力団とつながりがあるような本当にブラックな企業を指すことが多かったようですけどね。

何でもかんでもブラックと言う風潮は嫌い

率直に言って、このブラック企業という言い方は、あまり好きではありません。というのも、いわゆるリベラル系の人たちが、何でもかんでもブラックだと言うレッテルを貼って批判するからです。

ちょっと残業が多ければブラックと言われ、営業ノルマがキツければブラックと言われと言った感じなのです。

企業活動をしていれば、多かれ少なかれ無茶をすることはあります。また、繁忙期には、労働時間が長くなる事もあるでしょう。

でも、リベラルの人にかかると、そんな些細なことでもブラックにされてしまうのです。実際、リベラル系の新聞が書いた記事だと、世の中ブラック企業だらけという事になっています。多分彼らには、普通の会社でもブラック企業なのでしょう。

でも、これだと、実態を見誤らせることになるんですよね。コンプライアンス的にほんのちょっとだけルーズな会社と、最初から意図的に無理な労働をさせることを前提の会社を混同してしまう可能性があるのです。

まあ、リベラルの人たちがキャンペーン的に使っている言葉なのでしょうね。これだけ濫用すると、言葉としては近いうちに廃れていくはずです。日本の会社のほとんどがブラックだなんてことはありえませんから。

アニメ業界は本当にブラックみたいだね

ここまで書いたような感じで、私自身としては、ブラック企業という言い方は嫌いです。ただ、日本のアニメ業界は、間違いなくブラックのようですね。

アニメ業界がブラックだと言い切れる最大の要因は、低賃金で働かせることを前提としたシステムだからです。弁護士ドットコムというところの記事に、「もっと人間らしい仕事がしたい――年収110万円『アニメーター』の実態をどう見るか」という記事が載っていました。1

この記事によると、若手アニメーターの一部は、最低賃金を下回る水準で働いているという実態があるようです。つまり、そのへんのアルバイト以下の給与だという事です。

ちなみに、ご紹介した記事は、境真良という大学の先生に対するインタビュー記事ですね。以下引用している部分は、基本的にはこの先生の言葉として書かれている部分です。

若手アニメーターの現状をチェックしてみよう

アニメ業界がブラックと言うのは、具体的にどういう事か、ちょっと確認してみましょう。

まず、若手アニメーターの年収ですが、「現場作業の末端である『動画』では111.3万円」という記述があります。ということは、月収ベースで見ると10万円を切るということになります。

次に「仕上げ」という仕事をする人だと、年収で194.9万円ということです。これを月収ベースになおすと、約16万円です。

これに対して、1か月の平均作業時間が、262.7時間と書かれています。ということは、月収10万円とすると時給は381円という事になります。また、月収16万円としても、時給は609円です。

東京都の最低賃金が888円ですから、「動画」「仕上げ」の仕事をしている人は、最低賃金以下で働いている可能性が高いのです。つまり、労働基準法に違反しているケースの方が多いことになってしまいます。

さすがにこれはブラックと言っても良い水準ですよね。

低賃金が法的に問題になっていない理由

もちろんアニメ業界も、正々堂々と労働基準法に違反しているということはしていないでしょう。法律の穴を上手についているはずです。

具体的には、雇用ではなく下請けとして雇っているのでしょう。雇用契約でなく下請けとして雇えば、労働基準法の制約は受けません。個々のアニメーターは、業務の受注と言う形で仕事を請けることになるからです。

記事でも次のように解説されています。

雇用契約ではなく、報酬額が最低賃金に縛られない『業務委託契約』を結んでいるのではないでしょうか

言い方は悪いですが、脱法的な手法を使って、若手を安く使っているわけです。

失業のリスクも大きい

雇用契約じゃないという事は、簡単に職を失うリスクもあるということです。なぜかと言うと、あくまで仕事の下請けなので、親会社の移行で仕事を止めるのは簡単なのです。

つまり、単純に低賃金と言うだけでなく、広い意味での失業のリスクも大きいということですね。

さらに言うと、業務委託契約という形だと、雇用保険にも入っていないことになります。つまり、一度失業してしまうと、完全に収入がなくなってしまうのです。

普通のアルバイトよりも、リスクの大きい状況にいると考えてよさそうです。

現在はアニメの仕事が多いようですが、この状況が永遠に続くと言うわけでもありません。

あるいは、下っ端の仕事は、海外に取られる可能性だって大きいですよね。どの程度までアウトソースできるかは分かりませんが、全てを国内でやらないといけないと言うわけでもないでしょうから。

今の日本にあって、信じられないような環境の職場と言えそうです。

なぜアニメ制作現場の賃金は安いのか?

さて、このような状況になる理由は何なのでしょうか。ここまで悲惨なら、違う仕事を選べば良いとも思いますよね。

働きたい人が多いから賃金が安くなる

記事によると、まず、低賃金でも人が集まりやすい状況があるようです。

アニメを作るという仕事の魅力は、アニメの現場に人を集めます。そのため、労働市場的に『供給過多』となり、収入も低くなりがちです。

つまり、働きたい人が多いので、低賃金で働かせることが可能であるという事ですね。需要と供給のバランスで言うと、圧倒的に労働力の供給が多いという事みたいです。

でも、これだけが理由じゃないのは明らかですよね。他の人気の職種が、必ずしも低賃金と言うわけでもありませんから。

制作費が安いので賃金が安くなる

低賃金にさせているもう一つの理由は、アニメの制作費が安いからです。決められた制作費の中でアニメを作ろうと思うと、人件費を違法なレベルにまで削らないといけないということでしょう。

アニメ制作現場の賃金は上がるのか?

これに対する対処法としては、次のようなことが語られています。

状況を改善するには、アニメの制作費自体が増えなければなりません。それには、海外展開のようなワンソースマルチユース的な収益の開拓も重要ではありますが、なにより、制作資金を決める資金提供者からアニメにお金を支払う消費者まで、広くアニメそのものの価値に対する理解が不可欠であると思います。

記事を読んでいて一番違和感を感じたのがこの部分です。なんだか、突然リアリティが無い話になってしまうからです。

まず、海外展開と言うのは、売り上げを増やすためには役立つでしょう。ですから前半の部分は、まあ、理解できる内容です。

でも、後半の「アニメそのものの価値に対する理解」云々というのは、机上の空論のように思えてなりません。というか、論理ですらないですよね。

そもそも、「アニメの価値を理解したから、同じアニメに今までの倍払う」なんて人はいませんよね。そして、価格がマーケットメカニズムで決まるのなら、供給過剰である以上は価格が上がるはずがありません。

制作本数を国がコントロールする?

本当にアニメの制作費を上げようと思えば、例えば行政が年間の制作本数を国が決めるなどの規制をするしかないでしょう。中国みたいな状況にするわけです。

こうすれば、まず間違いなく、一本あたりの制作費用は増えるはずです。もっとも、こうすると、失業者が溢れるでしょうけどね。

海外のマーケットに出て行く

あるいは、大きなマーケットを狙って海外に出て行くという手もあります。記事に書かれている方法ですね。

この方法が理想的なのでしょうが、それほど簡単なことでは無いでしょう。海外展開をするとなると、外国のマーケティングに強い企業と組まないといけません。そこまでのことが出来る会社がいくつあるのか、ちょっと疑問があります。

技術革新は待遇の改善につながらない

技術革新でアニメの制作の効率をあげるという方法も考えられます。作業効率が上がりますから、賃金の上昇につながるのかもしれません。

でも、その場合は、下っ端のクビが切られるだけなんですよね。つまり、雇用と言う意味では、すぐにプラスとは言えなさそうです。技術革新自体は悪いことだとは思いませんけどね。

こうやって考えると、なかなか解決方法は無さそうです。

外部からの圧力で変わっていく気もする

一番ありえそうなシナリオは、アニメ制作現場で働く人たちの状況が世間的に認知され、世論の後押しを受けて状況がよくなるという道筋でしょうか。世論の圧力がかかり、賃金を上げざるを得ない状況になるわけです。

でも、この場合も、簡単に問題解決というわけにはいかないでしょうね。人件費の上昇は制作費用の上昇につながります。そうなると、今までのようにたくさんの作品を供給することは出来ないでしょう。

おそらく、力の無い制作会社は倒産するでしょう。また、国内で制作される本数も減るはずです。

仕事自体が減るので、結局、下っ端のクビが切られることになります。

やっぱり、海外でも売れるような作品を増やし、一本あたりの売り上げを大きくするしかないのでしょうね。業界を小さくしないで雇用を安定させるとしたら。

まあ、かなり大きな問題を抱えていると思って間違い無さそうです。


  1. もっと人間らしい仕事がしたい――年収110万円「アニメーター」の実態をどう見るか
    弁護士ドットコム 2015年5月6日 []

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