学生を中心にしたとされる安保法案の改正に反対するデモが話題になっています。
まあ、実際にどこまで盛り上がっているかは、疑問な部分もあるのですけどね。例えば、主催者の発表するデモ参加者が、警察発表の約15倍もあったりしたそうですから。さばを読むにも程があるって言う話です。
それに、報道には嘘も多いようです。例えば、学生の参加者がいないわけではありませんが、中心になっているのは団塊世代と思しき人たちだという話もあります。話題づくりのために、若い人が主体的にというイメージを作りたいのでしょう。
また、高校生を集めたという触れ込みのデモでは、高校生のコスプレをした大人も大量にいたなんていう話もあるそうです。そもそも、高校生以外の大人の参加者が圧倒的に多かったりなんていう状況だったようですね。
報道と実態は、必ずしも一致していないようです。
デモ参加は就職に不利なのか?
まあ、デモの実態はともかくとして、デモが行われたこと自体は事実です。そして、今回のデモに関する気になる噂があるようです。
どんな噂かと言うと、「デモに参加すると人生が詰む」というものです。具体的には、デモに参加すると就職活動に不利になり、その後の人生を棒に振ると言うのが主張のようです。1
人生を棒に振るかはともかくとして、就職に不利だというのは、いかにもありそうな話ではあります。実際のところはどうなのか、考えてみましょう。
何のヒントもなしに考えるのは難しいので、朝日新聞の記事を参考に見ていくことにしましょう。ちなみに、朝日新聞の記事ですから、デモに参加しても不利は無いという印象与えたい記事なのだと感じました。彼らとしては、多くの学生が動員したら嬉しいと思っているでしょうからね。
何にしても、一紙の情報だけを真に受けるのは危険なのは言うまでもありません。
企業側はデモ参加を理由に採用を拒める
デモに参加したという理由で不採用にする事は、法的に出来るのか。まず、これが一番気になる点でしょう。
それに関しては、次のような記述があります。
「デモに行くなどの政治的表現の自由は、憲法が保障する権利の中でも価値が高いもの」と一橋大大学院の阪口正二郎教授(憲法学)は話す。しかし、誰を採用するかは「企業活動の自由」でもある。
「三菱樹脂事件」では、学生の思想を理由に企業が採用を拒否したことが争われた。1973年の最高裁判決は「特定の思想信条を有する者を雇うことを拒んでも、当然に違法とはできない」とした。しかし、学界から「憲法で保障される思想、信条の自由を考慮していない」と批判され、三菱樹脂社も結局学生を雇った。阪口教授は「企業が思想で採用を拒む自由は、時代を追って狭くなっている」と指摘する。
この部分だけ読むと、デモ参加を理由に採用を拒むことは難しくなっているようにも読めます。新聞社の意図が表に出ているという感じが強くしますね。
でも、一番重要なのは「誰を採用するかは『企業活動の自由』」の部分です。一度採用した社員を解雇するのは難しいですが、採用の段階で弾くのは禁止されていません。今回のようなデモに関しても、その原則は変わらないというだけの話です。
ということで、この点だけを取ってみても、デモに参加するのは就職活動をするうえで不利だという事が分かります。デモに参加した学生が不利になるように扱うことは、必ずしも禁止されていないからです。朝日新聞がどんなことを書こうと、その事実は変わりません。
ちなみに、「企業が思想で採用を拒む自由は、時代を追って狭くなっている」という指摘も、ちょっと眉唾だと思わざるを得ません。採用基準に関する情報って、企業の中でも機密性が高いものですよね。本当に思想を理由に採用を拒否する企業が多くなっているのかは、実態としてはなかなか分からないはずです。
さらに言うと、現在は以前のように学生運動をする学生は多くありません。そういう学生が少なければ、結果として企業が重要視しなくなっても不思議ではありません。でも、今回のように大きなニュースになれば、今後は企業も重視する可能性も大きいですよね。
こんなふうに考える方が、自然ではないでしょうか。
一度内定を取ってしまえば、解雇されることは無い
ちなみに、内定を既に取っている場合は、状況が大分違います。
雇用問題に詳しい成蹊大の原昌登教授(労働法)は「労働法学界では、職務内容や能力と関連がないにもかかわらず、思想信条を理由に採用拒否するような行為は公序良俗に反し不法行為になるという考えが多数派だ」と説明する。また、思想を理由に内定を取り消された場合は、労働基準法違反で無効になる。
内定が出ている状態と言うのは、実質的には雇用されているのと大差が無いと考えられています。ですから、一旦内定が出てしまえば、簡単に解雇されることは無いわけです。
ということは、就職活動をする人は、少なくとも内定を取るまではデモに参加した事実を隠すのが重要ということですね。まあ、そんなことが出来るのかどうかは定かではありませんが。
デモに参加すると就職に有利?
ちょっと変わった意見として、デモに参加した方が就職に有利なんていう意見も紹介されていました。
一方、企業は近年「社会問題への感度の高さを評価する傾向にある」という。「国会前に足を運ぶのは、デモでヘイトスピーチを叫ぶのとはわけが違う。むしろ肯定的に受け取る可能性は十分ある」と感じる。
この意見も、一つ上で紹介した「成蹊大の原昌登教授」のものですね。
さて、この見方は妥当なものなのでしょうか。まず疑問なのが、「国会前に足を運ぶのは、デモでヘイトスピーチを叫ぶのとはわけが違う」という部分です。ヘイトスピーチとでも呼ぶべき過激な発言も有ったように思うのですが。アレを企業はポジティブに受取るのかなあ。
また、この手のデモの参加者は、労組の予備軍という先入観を与えかねませんよね。実際、リベラル政党とのつながりが強い学生もいるという情報も有りますから、「デモ参加=労組予備軍」みたいに直感的に判断する人がいても不思議ではありません。
ということで、肯定的にとらえる企業がどれほどあるのか、かなり疑問に思えてなりません。この教授の希望が書かれているのでは無いかと思えてならないのですが。そして、それを記事にしている朝日新聞の意図も、明白な気がします。
企業側の意見?
最後に、デモに参加した学生を採用しないとする企業側の意見もご紹介しておきましょう。ホリエモンこと堀江貴文氏が次のようなツイートをしています。
でも安保反対デモに行ってる事カミングアウトしたら私は採用しませんよ。仕事出来ないと思うから
思想で不採用だと言ってるのではなく、間違った理論に盲従する頭悪そうな奴だなって思うだけ。
世の中の雰囲気に乗せられて軽薄に行動する感じが、採用するに値しないと思っているのでしょうね。
確かに今回の改正は、実際の内容を見ると、民主党などが言っている「戦争法案」とは程遠いものです。それが判断できないで、雰囲気に乗せられる人間は要らないと言うのが彼の考えなのでしょう。
リスクがあることは理解しておきましょう
リベラル系のメディアの基本的なスタンスは、デモを理由に就職差別をするのはけしからんというものです。しかし、採用するがわからすれば、今回のデモに参加している事実から、資質がないと思う可能性も大きいわけです。企業側がデモ参加者を区別して考えるのには、それなりに理由があるわけです。
メディアの甘言に踊らされないで、冷静に判断するのが大事なのでしょうね。デモに参加するのは完全に個人の自由ですが、だからと言ってまったく不利がないとも言えないというのが公平な見方だと思います。
- デモに参加すると就職に不利? 「人生詰む」飛び交う
朝日新聞デジタル 2015年7月30日 [↩]
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