仕事をしている人が会社を辞めると、雇用保険からお金がもらえますよね。さて、このお金に関しては、何と呼ぶのが正しいのでしょうか。
困ったことに、この名称に関しては、統一した呼び方がありません。「失業保険」「失業給付」「失業手当」などの呼び方があります。
呼び方が統一されていないので、情報収集をするときや人と話すときにかなり混乱することがあります。はっきり言って、とても不便です。
このページでは、そのあたりの事情について、ちょっと確認してみましょう。
正式名称は雇用保険の「基本手当」
まず、正しい名前から確認しておきましょう。正しいというのは、法律上の呼び方という意味です。
雇用保険法によると、仕事を辞めた人に対して給付するお金は「基本手当」と呼ばれます。法律の条文に書かれていることなので、これが一番正しい言い方だと言って良いでしょう。
とは言え「基本手当」だと、法律に詳しくない人には何の手当か分からないですよね。実際、一般の人で、「基本手当」と呼ぶ人はかなり少ないはずです。
おそらく、これが理由で、さまざまな俗称が使われることになっているのでしょう。
「失業給付」は普通名詞?
「基本手当」は「失業給付」という言い方をすることもあります。これはハローワークのサイトでも、例えば次のように使われています。
このうち、基本手当(いわゆる通常の失業給付)を受給するに当たっては、ハローワークで以下の手続きをしていただく必要があります。
この言い方からも分かるように、「失業給付」というのは、普通名詞として使われているようですね。ですから、海外での失業者の給付制度でも「失業給付」という単語は使います。
ちなみに、「失業給付」と似た言葉に「失業等給付」というものもあります。「失業等給付」は雇用保険法に出てくる用語で、「求職者給付」「就職促進給付」「教育訓練給付」「雇用継続給付」の4種類の総称です。
「失業給付」と呼ぶ人は「失業等給付」が念頭にあるのかもしれません。
「失業手当」は俗語?
「失業手当」という言い方をする人もいるようです。これは、国語辞典によると、俗語という理解で良いようです。大辞泉の定義をご紹介します。
しつぎょう‐てあて〔シツゲフ‐〕【失業手当】
俗に、失業給付(基本手当)のこと。失業保険。「失業手当を受け取る」
「失業手当」に関しては、おそらく、「失業給付」と「基本手当」が混じってしまったのでしょうね。雇用保険に詳しくない人が誤用するのも、分からなくはありません。
「失業保険」は昔の法律の名前
さらに、「失業保険」という言い方をする人もいるようです。実は、失業保険というのは、以前あった法律の名前です。失業保険が法改正で雇用保険になりました。これも、大辞泉の定義を引用してみましょう。
しつぎょう‐ほけん〔シツゲフ‐〕【失業保険】
1 労働者が失業した場合に、一定期間、一定金額の保険金を支給して、生活の安定を保障しようとする社会保険。日本では昭和22年(1947)実施、昭和50年(1975)法改正により、雇用保険となる。
2 俗に、失業手当のこと。「失業保険を受給する」→基本手当
ずいぶん昔に無くなった法律ですが、未だにこの名称で呼ぶ人も多いようです。まあ、「基本手当」よりは直感的で分かりやすいですよね。
「失業給付」を使うのがベストだろうか
こうやって見てみると、可能であれば「失業給付」を使うのが一番良さそうですね。
法律用語としては「基本手当」なのでしょうが、これだと理解してくれない人が多いですから。「雇用保険の基本手当」だと名称として長すぎますしね。
ただ、現実的には、「失業保険」という言い方をする人が一番多いようなんですよね。となると、相手の理解を優先するなら、「失業保険」といういい方になるのでしょうか。
悩ましい問題です。
補足:使用頻度を調べてみました
ちょっと興味があったので、これらの語の使用頻度を調べてみました。具体的には、Google Trends を使って検索頻度の比較をしています。
これらの語には、予想以上に使用頻度の差がありそうです。
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