労災保険というのは、基本的には、仕事中のケガや仕事による病気に対する保険ですよね。でも、実は、通勤中のケガでも使えるのです。
通勤中のケガでも労災保険は使えます
労災保険は仕事中のケガなどに対する保険です。これは、労働者災害補償保険という正式名称からも、容易に想像がつくでしょう。
しかし、労災保険が補償するのは仕事中だけではありません。通勤中の事故によるケガなどでも給付があるのです。
しかも、仕事時間中のケガと比べても、給付内容はほとんど変わりません。厳密に言うと、通勤中の場合だと、ちょっと自己負担があるのですけどね。
例えば、通勤中の交通事故で入院したら、仕事中のケガによる入院などと同様に休業給付1 などがもらえるわけです。これにより、普段働いている分の約8割(休業給付=60%+休業特別支給金=20%2 )の収入があることになります。
とても手厚いです。
寄り道の扱いが難しい
ただ、通勤中のケガなどに関しては、若干難しい点が無いわけではありません。
例えば、帰りに買い物をして帰った場合は、通勤とみなせるのでしょうか。さらに言うと、帰りに居酒屋にでもよって一杯飲んで帰った場合は、通勤とみなしていいのでしょうか。
実はこのあたりのポイントは、過去に裁判で争われたことがあるような微妙な部分でもあります。基本的には、通勤経路から外れたらダメ。あるいは、通勤とは関係ない行為をしたらダメという事になっています。
もう少し正確に言うと、経路から外れたり関係ない行為をした後は、通勤と認められません。例えば、仕事帰りに居酒屋でお酒を飲んで帰ったような場合は、居酒屋に入った後は通勤にならないわけですね。
ただ、日常生活上必要でやむを得ない行為なら、通勤に戻ったら、そこから労災保険が適用されます。つまり、行為によっては、中断・逸脱の間以外は通勤と認めてくれる場合もあるわけです。
もう、ややこしいですね。
ちなみに、厚生労働省東京労働局のサイトには、次のような説明がありました。
逸脱とは、通勤の途中で就業や通勤と関係ない目的で合理的な経路をそれることをいい、中断とは、通勤の経路上で通勤と関係ない行為を行うことをいいます。
しかし、通勤の途中で経路近くの公衆便所を使用する場合や経路上の店でタバコやジュースを購入する場合などのささいな行為を行う場合には、逸脱、中断とはなりません。
通勤の途中で逸脱又は中断があるとその後は原則として通勤とはなりませんが、これについては法律で例外が設けられており、日常生活上必要な行為であって、厚生労働省令で定めるものをやむを得ない事由により最小限度の範囲で行う場合には、逸脱又は中断の間を除き、合理的な経路に復した後は再び通勤となります。
なお、厚生労働省令で定める逸脱、中断の例外となる行為は以下のとおりです。
(1) 日用品の購入その他これに準ずる行為
(2) 職業訓練、学校教育法第1条に規定する学校において行われる教育その他これらに準ずる教育訓練であって職業能力の開発向上に資するものを受ける行為
(3) 選挙権の行使その他これに準ずる行為
(4) 病院又は診療所において診察又は治療を受けることその他これに準ずる行為3
正確な用語を使って多少細かく説明されている部分もありますが、基本的には同じ説明ですね。例示がされているので分かりやすいです。
現実的には事故にあってからだよね
まあ、現実問題としては、事故にあってから労災の対象になるかどうか考える事になるのですけどね。判断が難しい場合もありますし。
- 仕事中のケガや仕事に由来する病気による休業だと、休業補償給付と呼ばれます。通勤中のケガによる入院だと休業給付です [↩]
- 休業補償の計算方法を教えてください。| よくある質問| 厚生労働省 [↩]
- 通勤災害について| 厚生労働省東京労働局 [↩]
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