社会保険や労働保険に関しては、基本すら分かっていないと言う人も少なくありません。でも、これは、非常に危険なことです。
なぜなら、知識がないばかりに、自分が損害をこうむることもあるのです。自分を守るためにも、最低限の知識は身につけましょう。
ヤマハの英語教室でトラブルが有ったようです
ヤマハミュージックジャパンというところが運営する英語教室で、ちょっとしたトラブルが有ったようです。自分がこの会社の社員だと思っていた英語講師14人が、実は社員では無かったというのです。1
社員ではなくヤマハミュージックジャパンが契約する、外部業者という扱いだったようですね。つまり、講師は従業員ではなく個人事業主として扱われていた事になります。
個人事業主ですから、従業員が入る健康保険にも厚生年金にも入ることができなかったようです。
時々見られるトラブルです
実態は社員であるにもかかわらず、会社の下請けのように見せかけるという手法は、時々ニュースになります。ですから、このニュースが、それほど新しいものではありません。
一部の芸能人も、そんな感じのようですよね。毎月定額で契約し、事務所の方針に従って仕事をするという、社員のような働き方をしている人は珍しくなさそうです。特に駆け出しの人だと。
実はこのやり方は、企業にとっては非常に都合が良いのです。あくまで外注業者として契約するので、上に書いたように、社会保険や労働保険の一部に入らないことになります。
社会保険や労働保険には企業も負担するものがあります。ということは、外注業者にすることで、この負担を免れることができるのです。
さらに、外注業者扱いであれば、契約を切るのも簡単ですよね。契約が切れれば、それでおしまいということにもできるわけです。
英語講師も無知すぎるのでは
このやり方は決して褒められたものではありません。それに、講師側が知らなかったことから推測するに、十分な説明も無かったのでしょう。その意味では悪質な感じもします。
ただ、今回のケースは、英語講師の側にも多少の問題は有ったような気もします。何が問題かと言うと、自分が社員ではないと気づくまでに20年もかかっているというのです。
20年も気づかないって、どういうことでしょうか。自分の契約に関して気づく機会は、何度もあるはずなのですが。
これに関連する朝日新聞の記事を、ちょっと引用してみましょう。
「あなた方は労働者じゃないので」。組合に加わった女性講師は、大阪労働局の担当者から言われた言葉が耳を離れない。
英語を使える仕事がしたいと講師を始めて20年になる。収入は生徒数に応じた歩合制のため安定せず、レッスンだけでは20万円に満たない。ヤマハからの源泉徴収票には「給与所得」とあるのに、年金や労災、健康保険といった社会保険がないことに疑問を感じて労働局に相談したところ、契約上は労働者ではないことを知った。
毎月給与明細は受け取っているはずです。それなのに、なぜ20年も気づかないのでしょうか。
朝日新聞の記事では、こういう契約が有ることが問題だと主張したようです。でも、個人的にそれ以上に問題だと思ったのは、20年も気づかないこの人たちです。
常識として知っておくべき社会保険の知識が、抜け落ちているとしか思えません。
この人たちの社会保険はどうなっているのでしょう
ちなみに、記事では詳細までは書かれていませんが、細かい部分で気になる箇所もあります。例えば、年金や健康保険の保険料を支払っていないとしたら、国民年金や国民健康保険の保険料を納める必要があります。
それをちゃんと納めていたのでしょうか。納めていないとしたら、ずっと健康保険がない状態だったわけですよね。
それに、将来受け取る国民年金の年金額がかなり小さくなります。20年も納めていなければ、3分の1になってしまいます。
それ以上に、国民年金の保険料を納めていない期間が長いと、自分が障害者になったときに障害年金がもらえないという問題もあります。
自分を守るためにも最低限の社会保険・労働保険の知識は持ちましょう
企業側のやり方が悪質であるかどうかは別として、最低限の知識を持っていないと自分を守ることができません。この記事の教訓は、何よりもそこでは無いかと思うのです。
逆に言うと、もっと早く気づいていれば、何らかの対処ができた可能性は大きいでしょう。残念なことですが、法律はより知識がある人を守ってくれるのです。
新聞記者の知識の無さも気になる
ちょっと余談ですが、新聞記者の知識に関しても、ちょっと気になる点がありました。気になったのは、上で引用した「年金や労災、健康保険といった社会保険がない」という部分です。
まず、労災は社会保険ではなく、労働保険です。そして、労災保険の保険料は全額事業主が負担なので、社員だとしても負担はありません。
その代り、雇用保険は従業員負担があります。雇用保険は労働保険ですね。
これは、かぎかっこ付きの部分では無いので、朝日新聞の記者が発信している部分ですよね。だとしたら、新聞記者の社会保険の知識もかなりヤバいです。
なんて書いてみましたが、新聞記事で労働保険や社会保険に関する細かい間違いを見つけるのは珍しいことではありません。あ、これ以外でも経済記事全般で、基礎的なレベルの間違いは見つけます。
かれらは、さも何でも知っているような書きた方をしています。でも、実際の新聞記者のレベルなんてこんなものです。
おそらく、一定期間でローテーションがあるので、専門知識が身につかないのでしょう。ですから、新聞に書いてあることだからと、鵜呑みにしてしまうのも危険です。
新聞には嘘が書いてあるという前提で、検証しながら読むことも大事です。要するに、個人のブログみたいなものだと思ってください。
- 「あなたは労働者じゃない」保険適用外の英語講師に衝撃
2019/1/20(日) 23:16配信 朝日新聞デジタル [↩]
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