【疑問】
雇用保険というのは、労働者の失業に備えるための保険です。ということは、企業の役員や個人事業主は、雇用保険(失業保険)に入れないのでしょうか。
原則として役員などは労働者とはみなされません。そうであれば、雇用保険の意義1 から考えると、入れない可能性が大きそうですよね。
原則的には役員は雇用保険には入れない駄目
上に書いたように、雇用保険の趣旨から考えると、会社役員や個人事業主は雇用保険に入ることは出来ないと考える方が自然ですよね。なぜなら、役員や個人事業主は労働者ではありませんから。
実際、制度上もそうなっていて、会社役員や個人事業主は原則として雇用保険に入れません。
労働者としての実態があれば入れるケースも
ただ中小企業の場合、役員の肩書きがあっても、実質的には普通の社員と同じというような人もいます。特に日本の場合、従業員から役員になるケースも多いです。肩書きだけ役員みたいな人も、少なくないでしょう。
そういう人は、実質的には従業員と同じです。こういうケースも雇用保険に入れないとなると、ちょっとかわいそうですよね。
実は、実態として労働者と考えられるケースでは、雇用保険に入れるケースもあります。具体的には、株式会社の取締役は、労働者としての実態があれば、雇用保険に入れるようです。
厚生労働省のサイトを確認してみましょう
厚生労働省のサイトから引用してみましょう。
株式会社の取締役は原則として被保険者となりません。
ただし、取締役であって、同時に部長、支店長、工場長等の従業員としての身分を有する者は、服務態様、賃金、報酬等の面からみて労働者的性格の強いものであって、雇用関係(注2)があると認められる者に限り「被保険者」となります。この場合、公共職業安定所へ雇用の実態を確認できる書類等の提出が必要となります。
この後にも「代表取締役は被保険者になりません。」などの細かい解説が続くのですが、ここでは割愛しましょう。とりあえず、取締役でも雇用保険に入れるケースがあるということが重要です。
もう一つ重要なのが、「公共職業安定所へ雇用の実態を確認できる書類等の提出」という部分ですね。まあ要するに、取締役を雇用保険に入れたい場合は事前にハローワークなどに相談しろ、ということです。
細かい話かも知れませんが、中小企業では重要な問題ではないかと思います。
個人事業主は雇用保険には入れない
ちなみに、個人事業主はどうやっても雇用保険には入れません。理由は簡単で、個人事業主は労働者とは認められないからです。
そもそも個人事業主が雇用保険に入れたら、かなりおかしな話になりそうですよね。まず、個人事業主は給与をもらっていません。給与が無いと保険料の額も失業保険の額も決めようがありません。
さらに言うと、個人事業主が雇用保険に入れるとなると、自分で勝手に廃業すれば給付が受けられることになってしまいます。そんなお手盛りな仕組みが、許されるわけがありませんよね。
個人事業主に限らず、会社の経営者などは、事業が上手くいかないケースに自分自身で備えるしかないわけです。
- 雇用保険法第一条 「雇用保険は、労働者が失業した場合及び労働者について雇用の継続が困難となる事由が生じた場合に必要な給付を行うほか、(略) [↩]
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