雇用政策は誰の仕事?| 日本は厚生労働省だが、アメリカでは…

日本で雇用関係の行政機関と言うと、厚生労働省を思い浮かべる人が多いでしょう。労働と入っていますから、直感的にわかりやすいですよね。

ところがアメリカでは、全く状況が違います。実は、雇用政策の一部は、FRB の仕事とされているのです。

FRB議長が金融政策と失業を絡めてコメントしています

この証拠はアメリカのニュースを見るとよくわかります。FRB 議長が失業率に関してコメントしたというようなニュースは少なくありません。「失業率が○○だから、金利は下げる」とか言うようなやつですね。実際にその手のニュースに接したことがあ在る人も多いでしょう。

FRB議長が雇用に関してコメとを出した例を一つ挙げてみましょう。例えば、2014年2月11日付の日経新聞の記事で、イエレンFRB議長が雇用について次のようにコメントしています。

長期失業や労働参加率低下など米労働市場の構造問題を重視するイエレン氏は、「フルタイムで働きたいのにパートタイムを余儀なくされる労働者数は非常に多い」などと強い危機感ものぞかせる。

失業は金融政策との関係が深いと考えられている

FRB は、日本で言うと日銀に近い組織です。そんな組織が雇用政策を担っているとなると、ちょっと違和感を感じる人もいるでしょう。

ただ、FRB が雇用関係の政策に責任を負うのは自然なことなのです。なぜかというと、失業は金融政策である程度コントロールできると考えられているからです。

日銀は雇用政策には無関係なんだよね

一方で、日銀総裁は雇用関係のことに言及する事はあまり多くありません。この理由も単純明快で、日銀は雇用政策の責任を負っていないからです。法律に書かれていないのですね。

最近は、日銀法を改正して「雇用の最大化」や「雇用の安定化」と言うような文言を入れようという動きもあります。

日銀法の改正を求める声は結構大きいですからね。こういう変更が近々あるかもしれません。

法律に縛られたくない日銀関係者は、猛反対だそうですけど。

2017年1月追記:日本でも金融政策は雇用に有効でした

第二次安倍内閣の経済政策であるアベノミクスの中心は、日銀による金融緩和です。日銀は黒田総裁を中心に、異次元緩和と呼ばれる金融緩和を行いました。上に書いたように金融緩和は雇用に有効なら、日本の雇用は改善しているはずですね。

実際にはどうだったかというと、日本の雇用は大幅に改善しているようです。有効求人倍率で見ても完全失業率で見ても、民主党政権時代より大幅に改善しているのは誰の目にも明らかでしょう。

これに対する反論として、有効求人倍率や完全失業率は増えたが実質賃金は下がっているという指摘をする人たちもいました。しかし2016年に入ってからは、実質賃金すらも改善傾向にあるのです。具体的には、2016年9月まで9か月連続でプラスでした。そして、2016年10月も横ばいだったようです。1

ちなみに、実は、実質賃金が上がらないから雇用政策が失敗しているという指摘は、まったく正しくありません。雇用が拡大する局面では、まずは非正規の雇用が増えます。ですから、有効求人倍率や完全失業率が改善する時期に、一時的に実質賃金は下がるのは当然なのです。

この結果を見る限り、金融緩和は雇用に有効である可能性は大きそうですね。まあ、アメリカがずっと信じてやってきていることですから、効果があって当然なんですけどね。


  1. デフレ心理、払拭できず
    SankeiBiz 2016/1/3 []

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