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実質賃金をわかりやすく説明してみる

2020年3月6日 金曜日

アベノミクスが始まってしばらくして、実質賃金という語が話題になりました。アベノミクスが上手く言っていない証拠として、実質賃金が下がっていることを指摘したのでです。

賃金が下がると言われると、なんだかマズいことが起こっている印象ですよね。実際のところはどうなのでしょうか。

実は、実質賃金の上下を見ても、それだけで何かを言うのは難し良いのです。

実質賃金について考えてみよう

一部のマスコミと野党議員が好きな経済用語に、「実質賃金」というものがあります。この実質賃金について、少し考えてみましょう。

実質賃金とは

実質賃金というのは、物価上昇を加味した賃金のことです。もうちょっと正確に書きましょう。大辞林によると、「名目賃金を消費者物価指数で割った賃金」を実質賃金と言います。

実質賃金 = 名目賃金 ÷ 消費者物価指数

受け取る給料の額が変わらなくても実質賃金は変動する

名目賃金というのは、給与明細に書かれている月給の金額のことだと思っておけばいいでしょう。それを、消費者物価指数で割るわけですから、給料の金額が変わらなくて消費者物価指数が上がると実質賃金は下がるという関係にあります。

もちろん、逆も言えます。給料が変わらなくても物価が下がれば、実質賃金は上がります。

あるいは、給料が1年前より5%上がっても、物価が10%上がったら、実質的には給料が減ったことになりますよね。給料が増えた以上のペースで、物価が上がったわけですから。

実質賃金を使っって安倍政権を攻撃

さて、この実質賃金は、第二次安倍内閣の誕生後に、政権批判の為に使われました。結構粘り強く野党が追求していたために、本当に問題だと思っている人も多かったようです。今でも問題だと信じて疑わない人もいます。

ちなみに、これを書いている2020年時点でも、時々ニュースサイトなどで目にすることがあります。さすがに使用頻度は減りましたけどね。

例えば、Yahoo!ニュースなどで検索してみると、1か月に20前後の記事があがっているという感じです。しぶとく生き残っているという感じでしょうか。

どの点を攻撃した?

この実質賃金ですが、野党やマスコミは、どのように利用していたのでしょうか。ちょっと思い出してみましょう。

■ アベノミクスは失敗だと言いたい野党

まず、第二次安倍政権が発足し、アベノミクスが一定の成果を上げました。わかりやすいところでは株価の上昇と、雇用環境の改善でしょう。

そこで目をつけたのが、実質賃金です。「アベノミクスで雇用は改善されたと言うが、実質賃金は下がっているー」などと噛み付いたのです。

「見た目の給料は少し増えたが、私たちは本当は貧しくなった。アベノミクスは失敗だー」というのが彼らの主張です。

確かに厚生労働省が発表する実質賃金指数は下がっていましたし、なんとなく正しいことを言っていそうですよね。

実は実質賃金指数では好景気とも不景気とも言えない

ただ、この野党の主張は、あまり意味があるものとは言えません。というのも、一人一人の実質賃金が増えても、実質賃金指数が減るというようなことも起きうるからです。

一人一人の実質賃金が増えているわけですから、誰も損をしていません。それにかかわらず、実質賃金指数が下がることがあるのです。

■ 実質賃金指数の定義

これも、一つずつ見ていきましょう。まず、厚生労働省のサイトに有る、実質賃金指数の定義から。

実質賃金指数 = 名目賃金指数 ÷ 消費者物価指数 × 100

そして、名目賃金指数というのは、ある年(基準年)を100として、そこから名目賃金の平均が何倍になったかという数字のことです。例えば、基準年から10%増えたら110になるという感じです。

■ 平均を使ったトリックがある

ここで、名目賃金指数が平均であるというのが重要になってきます。実は、全員の給料が下がっていないのに、名目賃金が下がるというような事が起こりうるのです。

ちょっと極端な例を考えてみましょう。日本には3人しか人がいなかったとします。それぞれ、A、B、Cとしましょう。

昨年はCは仕事をしておらず、AとBだけが仕事をしていました。それぞれ給料は月給で40万円だったとします。この場合、名目賃金は40万円ですよね。

(40万+40万)÷2=40万

次の年はCも仕事をしました。ただ、新人なので給料は安く、AとBの半分の10万円だったとします。この場合、名目賃金は30万円になります。

(40万+40万+10万)÷3=30万

前年仕事をしていなかったCが仕事をしたために、平均が下がってしまったのです。

このように、今まで仕事をしていなかった人が安い給料で仕事を始めると、名目賃金の平均は下がります。つまり、名目賃金指数は下がるということです。

というこは、仮に物価が変動してないとすれば、実質賃金も下がることになります。給料が減らないのに実質賃金が減るケースがあるという一例が示さえました。

■ このケースでは誰も損をしていないことを確認してください

さて、このケースでは誰か損をしたでしょうか。今まで仕事をしていなかったCさんも仕事ができたわけですから、全体としてみれば誰も損はしていませんよね。状況は良くなっています。

つまり、「実質賃金の下落 = 悪いこと」という単純な図式は正しくないのです。実質賃金の下落が良いことというケースすらあるわけです。

つまり、実質賃金の下げだけを見て「実質賃金がー」となってはいけないわけです。そうなった背景を探る必要があります。

実質賃金を上げる簡単な方法

最後に、ちょっと皮肉を。

短期的に実質賃金を上げたいのなら、実は簡単な方法があります。給料が安い人を、クビにするだけで良いのです。

給料が安い人の首を切れば、名目賃金があがります。平均をとっているわけですから、当然ですよね。

そうなると、物価の大きな変動が起こらない限り、実質賃金指数も上がるでしょう。でも、これって、誰も望まない状況ですよね。

つまり、実質賃金だけをみて騒いでも、全く意味がないわけです。

仕事をしている人も増えている| 少子化だから完全失業率改善の嘘

2020年3月3日 火曜日

失業率が減ったのは、少子化の影響で働く人が減ったからだと主張する人がいます。これは本当なのでしょうか。

実は、これは、明らかな嘘なのです。ちょっと調べれば、簡単に分かります。

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【自分は社員ではないの?】社会保険や労働保険の基本を知らないと損をするという話

2019年1月21日 月曜日

社会保険や労働保険に関しては、基本すら分かっていないと言う人も少なくありません。でも、これは、非常に危険なことです。

なぜなら、知識がないばかりに、自分が損害をこうむることもあるのです。自分を守るためにも、最低限の知識は身につけましょう。

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都道府県別の一人当たりの所得ランキング| 東京がダントツ、あとは横並びという感じか

2017年11月22日 水曜日

内閣府経済社会総合研究所というところが、「平成 26 年度県民経済計算について」というレポートを出しています。このレポートを見ると、各都道府県の一人当たりの所得がわかります。

このページでは、都道府県によって一人当たりの所得がどの程度違うのか、チェックしてみましょう。かなり大きな差があるようです。

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生活保護を受給するための要件は| 親族、資産、収入、働けるかの4つ

2017年11月20日 月曜日

ファイナンシャルフィールドというメディアに、「生活保護を受けられる主要4つの条件とは」1 という記事が掲載されていました。このページでは、この記事を元に、どんな人が生活保護を貰えるのかチェックしてみましょう。2

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  1. 生活保護を受けられる主要4つの条件とは
    ファイナンシャルフィールド 最終更新:11/20(月) 18:20 []
  2. この記事の文章が読み辛くて、少しイライラしたのは内緒です。 []

高齢者を除くと生活保護の受給世帯は減少を続けている| 誰がどう見てもアベノミクスの成果だと思われます

2017年11月5日 日曜日

最近は、雇用に関しては、アベノミクスの成果が強調されることが多いですね。

有効求人倍率で見ても、完全失業率で見ても、かなり良い数字が出ています。その上、正社員の求人が増えてきたという話もあります。

賃金に関しては、まだ完ぺきとは言えませんが、基本的に良い傾向なのは間違いありません。2017年10月の衆院選で自民党が勝った要因の一つは、間違いなく経済政策の成功でしょう。

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有効求人倍率が改善しても増えたのは条件の悪い警備や介護の仕事ばかり?

2016年12月28日 水曜日

有効求人倍率が改善したというニュースに対する反応として、「増えたのは警備や介護の仕事ばかり」というようなコメントがありました。どうやら、条件の悪い仕事ばかりが増えて、いい仕事は増えていないのだと言いたいようです。

これって、誰がどう考えても滅茶苦茶な意見ですよね。でも、これに「そう思う」を付ける人が意外と多いので驚きました。日本人大丈夫か?

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雇用保険の失業者への給付の名称、使用頻度は「失業保険」が圧倒的| 正式名称の「基本手当」は最下位に

2016年9月18日 日曜日

前のページで見たように、雇用保険の失業者への給付は様々な名前で呼ばれています。雇用保険法でつかわれている正式名称が「基本手当」で、それ以外に「失業給付」「失業手当」「雇用保険」などの言葉が同じ意味でつかわれているようです。

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失業給付なの?失業保険なの?| 法律的には雇用保険の基本手当が正しい言い方です

2016年9月18日 日曜日

仕事をしている人が会社を辞めると、雇用保険からお金がもらえますよね。さて、このお金に関しては、何と呼ぶのが正しいのでしょうか。

困ったことに、この名称に関しては、統一した呼び方がありません。「失業保険」「失業給付」「失業手当」などの呼び方があります。

呼び方が統一されていないので、情報収集をするときや人と話すときにかなり混乱することがあります。はっきり言って、とても不便です。

このページでは、そのあたりの事情について、ちょっと確認してみましょう。

正式名称は雇用保険の「基本手当」

まず、正しい名前から確認しておきましょう。正しいというのは、法律上の呼び方という意味です。

雇用保険法によると、仕事を辞めた人に対して給付するお金は「基本手当」と呼ばれます。法律の条文に書かれていることなので、これが一番正しい言い方だと言って良いでしょう。

とは言え「基本手当」だと、法律に詳しくない人には何の手当か分からないですよね。実際、一般の人で、「基本手当」と呼ぶ人はかなり少ないはずです。

おそらく、これが理由で、さまざまな俗称が使われることになっているのでしょう。

「失業給付」は普通名詞?

「基本手当」は「失業給付」という言い方をすることもあります。これはハローワークのサイトでも、例えば次のように使われています。

このうち、基本手当(いわゆる通常の失業給付)を受給するに当たっては、ハローワークで以下の手続きをしていただく必要があります。

この言い方からも分かるように、「失業給付」というのは、普通名詞として使われているようですね。ですから、海外での失業者の給付制度でも「失業給付」という単語は使います。

ちなみに、「失業給付」と似た言葉に「失業等給付」というものもあります。「失業等給付」は雇用保険法に出てくる用語で、「求職者給付」「就職促進給付」「教育訓練給付」「雇用継続給付」の4種類の総称です。

「失業給付」と呼ぶ人は「失業等給付」が念頭にあるのかもしれません。

「失業手当」は俗語?

「失業手当」という言い方をする人もいるようです。これは、国語辞典によると、俗語という理解で良いようです。大辞泉の定義をご紹介します。

しつぎょう‐てあて〔シツゲフ‐〕【失業手当】
俗に、失業給付(基本手当)のこと。失業保険。「失業手当を受け取る」

「失業手当」に関しては、おそらく、「失業給付」と「基本手当」が混じってしまったのでしょうね。雇用保険に詳しくない人が誤用するのも、分からなくはありません。

「失業保険」は昔の法律の名前

さらに、「失業保険」という言い方をする人もいるようです。実は、失業保険というのは、以前あった法律の名前です。失業保険が法改正で雇用保険になりました。これも、大辞泉の定義を引用してみましょう。

しつぎょう‐ほけん〔シツゲフ‐〕【失業保険】
1 労働者が失業した場合に、一定期間、一定金額の保険金を支給して、生活の安定を保障しようとする社会保険。日本では昭和22年(1947)実施、昭和50年(1975)法改正により、雇用保険となる。
2 俗に、失業手当のこと。「失業保険を受給する」→基本手当

ずいぶん昔に無くなった法律ですが、未だにこの名称で呼ぶ人も多いようです。まあ、「基本手当」よりは直感的で分かりやすいですよね。

「失業給付」を使うのがベストだろうか

こうやって見てみると、可能であれば「失業給付」を使うのが一番良さそうですね。

法律用語としては「基本手当」なのでしょうが、これだと理解してくれない人が多いですから。「雇用保険の基本手当」だと名称として長すぎますしね。

ただ、現実的には、「失業保険」という言い方をする人が一番多いようなんですよね。となると、相手の理解を優先するなら、「失業保険」といういい方になるのでしょうか。

悩ましい問題です。

補足:使用頻度を調べてみました

ちょっと興味があったので、これらの語の使用頻度を調べてみました。具体的には、Google Trends を使って検索頻度の比較をしています。

これらの語には、予想以上に使用頻度の差がありそうです。

大学生が失業保険をもらえないのはちょっと理不尽な気がする| 必要な学生も少なくない気がするんだけどなあ

2016年9月18日 日曜日

学校に行きながら、バイトなどの仕事をしている大学生っていますよね。特に、地方から上京して一人暮らしをしている学生は、かなりの時間働かないといけないケースも多そうです。

(さらに…)